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トラックドライバーの過労死の事例と、事業者が行うべき対策を紹介
厚生労働省は、毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と位置づけ、過労死をなくすための取り組みを行っています。そこで本記事では、トラックドライバーの過労死の事例や、過労死防止の具体的な対策などについて紹介していきます。

トラックドライバーの過労死は、どのような形で起こり得るのでしょうか。実際にあったケースを幾つか紹介します。
過労死ラインを大幅に超過していたケース2018年、大阪府の運送会社である「田平陸送」に勤めていた長距離トラックドライバーの男性(当時52歳)が、運転中に心筋梗塞を発症し、搬送先の病院で死亡した事例です。運行記録などから、この男性の直近半年間の時間外労働が月あたり平均159時間と、過労死ラインである月平均80時間を大幅に超過していたことが分かり、労災と認定されました。
休日に亡くなったものの労災が認められたケース2019年、引っ越し大手「アートコーポレーション」の子会社、「アートバンライン」に勤めていた長距離トラックドライバーの男性(当時53歳)が自宅で急死しました。休日に自宅で亡くなったケースですが、遺族が労災を申請。労基署の調べにより、亡くなる前の半年間の時間外労働時間が月あたり65~110時間だったことが分かり、労災が認められました。
労働者性が争点となっているケース2013年、埼玉県の運送会社「東京デリバリーセンター」のトラックドライバーとして働いていた男性(当時62歳)が、急性虚血性心疾患により亡くなりました。亡くなる直前6ヶ月の時間外労働時間は月平均80時間の過労死ラインを上回っており、労災と認められました。その後、2024年に遺族が会社に対し、過重労働を防ぐ安全配慮義務を怠ったとして、会社を提訴しました。一方の会社は、亡くなった男性が独立した事業主であるとし「労働者性はない」と主張しています。
トラックドライバーの過労死対策は、ドライバー本人に任せるのではなく、雇用主である事業者が主体的に取り組む必要があります。
ドライバーの命はここで述べるまでもなく大切なものですが、過労死が発生したという事実は、会社の評判にも大きく影響します。また、運転中の過労死は、重大な事故を引き起こす可能性もあります。
国土交通省の「トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル」では、トラックドライバーの過労運転を防ぐための対策として、以下の9点が紹介されています。
- 1. 事業者が一丸となって、トップから過労運転を防ぐ
- 2. 過労のメカニズムを理解し、睡眠を改善する
- 3. 点呼を活かして過労運転を防止する
- 4. 余裕のある運行計画を作成し、その後も運行支援をすすめる
- 5. 健康管理を日常化する
- 6. 運転者が相談しやすい職場環境をつくる
- 7. 荷主・元請事業者に理解してもらう
- 8. 最新技術を駆使して、安全対策に取組む
- 9. 積極的に休憩施設を利用する
厚生労働省は、毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と位置づけ、過労死をなくすための取り組みを実施しています。
トラックドライバーは長時間労働が慢性的な課題となっており、実際に過労死が発生してしまった事例を見ても、過労死ライン(月80時間以上の時間外労働)を超えるケースが多くなっています。
また、トラックドライバーの過労死は、その業務の性質上、運転中に発生するリスクもあり、周囲を巻き込んだ事故にも発展しかねません。ドライバー個人に対策を委ねるのではなく、事業者側が責任を持って、主体的に対策を行うことが求められます。
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