> > 国土交通省、「トラックGメン」の活動実績を公表「働きかけ」「要請」は前年の4倍以上に

ドライブワーク通信

国土交通省、「トラックGメン」の活動実績を公表「働きかけ」「要請」は前年の4倍以上に

2023年10月6日 、国土交通省は「トラックGメン」の活動実績と、今後実施する予定の取り組みについて公表しました。

トラックGメンとは

トラックGメンは、トラック運送事業者が適正な取引を実施できるよう、荷主企業や元請事業者の監視や、貨物自動車運送事業法における「働きかけ」や「要請」の実行力を強化する目的で、2023年7月に創設されました。まずは、トラックGメンが創設された背景を解説していきます。

物流2024年問題とは

2024年4月より、働き方改革関連法案における時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用されます。上限規制が適用されることで、トラックドライバーの時間外労働時間は年間960時間までとなります。運送業界ではかねてよりトラックドライバーの長時間労働が課題となっていました。時間外労働の上限規制は、健康やワークライフバランスを守るために必要な措置です。

一方、時間外労働が制限されることで、運送事業者の売上減、収入における残業代の割合が大きかったドライバーの収入減とそれにともなう人手不足の加速、運行時間が減ることによって運べなくなる荷物が出てくるなど、さまざまな問題の発生が懸念されています。これらの諸問題の総称を「物流の2024年問題」あるいは単に「2024年問題」といいます。

2024年問題に向けた対策

2024年問題の対策には、トラックドライバーの働き方を効率化し、限られた労働時間内でも十分な運行時間を確保することと、ドライバーの労働環境による人手不足の改善が不可欠です。そして業務効率化と労働環境改善を実現するためには、荷主企業や元請け事業者が、トラック運送事業者と適切な条件で取引をおこなう必要があります。しかし従来の荷主企業とトラック運送事業者との関係においては、荷主企業側の立場が強くなりがちであり、荷主企業は業界内での価格競争を強いられ、安価での取引を余儀なくされてきました。

上記のような課題を受け、国土交通省は以下のような対策を行ってきました。

  • ● 標準的な運賃の告示:荷主企業とトラック運送事業者が適切な価格で契約を結べるよう、標準的な運賃」を国が告示する
  • ● 荷主対策の深度化:トラックドライバーの違反行為に荷主企業が関わっている場合、荷主企業に対して「働きかけ」や「要請」を行う
さらに踏み込んだ対策としての「トラックGメン」

トラック運送事業者と荷主企業のあいだで、トラック運送事業者が不利な条件で契約を結ぶケースは、上記のような対策を経ても依然として十分に是正されていません。

そこで2023年7月、国土交通省は前述の「働きかけ」や「要請」の執行力をさらに高めるため、国土交通省の82人に、新規に増員した80人を加えた162人の体制からなる「トラックGメン 」を創設しました。トラックGメンは荷主企業や元請け事業者を監視し、必要に応じて「働きかけ」や「要請」を行っていきます。

トラックGメンの活動実績と今後

続いて、2023年10月6日に公表された、トラックGメンの活動実績と今後の活動について紹介します。

活動実績

トラックGメンの導入により、荷主企業や元請け事業者に対する「働きかけ」や「要請」の件数は大きく増加しました。

令2020度~2022年度のデータでは、「働きかけ」の件数は1年間で24~26件、より強い「要請」については令和4年に3件あったのみでした。しかしトラックGメンが創設された2023年度は、4月から9月までのわずか5ヶ月間で、前年1年間の約4倍となる127件の「働きかけ」と、2倍となる6件の「要請」を実施しています。さらに、127件の「働きかけ」のうち120件、および6件の「要請」のうち5件は、トラックGメンが創設された7月21日から9月30日までの、わずか40日あまりのうちに実施されました。

今後の活動

国土交通省はトラックGメンの今後の活動として、「荷主に対する関係行政機関との合同ヒアリング」と「集中監視月間」の実施を挙げています。

荷主に対する関係行政機関との合同ヒアリング

国土交通省はトラックGメンの今後の活動として、「荷主に対する関係行政機関との合同ヒアリング」と「集中監視月間」の実施を挙げています。

集中監視月間

11月~12月を集中監視月間に定め、これまでの調査結果を踏まえた「働きかけ」「要請」「勧告」「公表」を集中的に実施していきます。

2024年問題の対策には、トラックドライバーの業務効率化と労働条件の改善が必要です。そしてその2点を実現するためには、トラック運送事業者と荷主企業が、適切な条件で契約することが不可欠です。

適切な契約に向けては、国がこれまでも「標準的な運賃の告示」や「荷主対策の深渡化」などの対策をおこなっていましたが、2023年7月にはさらに踏み込んだ対策として「トラックGメン」が創設されました。

トラックGメンは創設以降、前年を大きく上回る「働きかけ」や「要請」を実施しており、今後もその活躍が期待されています。

文/BUY THE WAY lnc.

ドライブワーク通信バックナンバー
  • ネパールでの現地採用面接
    ネパールでの現地採用面接及び、教育機関の視察を行いました。
  • 特定技能外国人の多い国とその理由
    人手不足が深刻な分野において、即戦力となる外国人労働者を確保するため、2019年4月からスタートした特定技能制度ですが、現在、28万人以上の特定技能外国人が就労しています。どういった国の方がどのような理由で日本に来日するのでしょうか。
  • 国土交通省、自動物流道路の実装を目指す
    2025年4月10日、国土交通省は、自動物流道路の実装に向けたコンソーシアムのホームページを開発しました。 自動物流道路は、運送業界における深刻なトラックドライバー不足を解決する手段のひとつとして期待されています。 本記事では、自動物流道路の概要や、実装に向けた今後の流れなどについて解説します。
  • トラックドライバーの孤独解消に焦点を当てたAIが登場
    2025年5月、つながりAI株式会社(以下:つながりAI)ろ、ココネット株式会社(以下:ココネット)は、配送ドライバー向けの対話型AI「同僚AI」の実証実験を開始しました。同僚AIは、配送ドライバーが業務中に感じる孤独感の解消と、それによる人手不足の解消と目的としています。
  • 外国人材を採用するまでのスケジュール
    外国人ドライバーを採用し、本入社までの期間はどれくらいかかるのか。 今回は、国外採用と国内採用で期間がかわるため、それぞれ紹介する。

ドライブワーク通信一覧へ

Copyright (c) Az staff Inc. All Right Reserved.