> > 全日本トラック協会、車輪脱落事故への対策を呼びかけ 冬用タイヤへの交換時期を前に

ドライブワーク通信

全日本トラック協会、車輪脱落事故への対策を呼びかけ 冬用タイヤへの交換時期を前に

冬用タイヤへの交換時期を前に、全日本トラック協会はトラック運送事業者に向け、
車輪脱落事故の対策を強く呼びかけています。

車輪脱落事故とは

大型車の車輪脱落事故の発生件数は過去10年で大きく増加しています。国土交通省の発表 によると、2013年度に発生した大型車の車両脱輪事故は年間19件でしたが、2022年度は140件でした。

ここでいう「大型車」とは車両重量8トン以上もしくは乗車定員30人以上の自動車のことを指します。また「車両脱輪事故」とは、ホイールボルトの損傷やホイールナットの脱落などにより、車輪が自動車から脱落する事故のことをいいます。脱落した車輪が他の車輌や歩行者にぶつかると、死亡事故になることもあります。

車輪脱着事故が発生するリスクは、ノーマルタイヤから冬用タイヤに交換した直後に最も高まります。2022年度に発生した車両脱落事故のうち、66%は冬用タイヤなどへの交換後に発生しています。また、53%は車輪の脱着作業から1ヶ月以内に発生していることが分かっています。

さらに月別に見ると、66%が11月~2月の冬季に集中しています。地域別の分布では豪雪地帯である東峰区地方が最も多く、38%が発生しています。

車輪脱落事故の発生原因

国土交通省では、2022年度に発生した車両脱落事故車両140件のうち136件で、対象の車両を調査し、各部品の状態やタイヤ脱着作業を行った際の状況を調査しました。調査の結果、見つかった劣化や損傷の事例は以下のとおりです。

  • ● ホイールナット、ホイールボルトに著しいサビや汚れがある
  • ● ホイールナットとワッシャの間に潤滑油を塗っておらず、スムーズに回転しない
  • ● 著しいサビによりディスクホイールが損傷している など
車両脱輪事故の対策

2023年10月3日、日本トラック協会は冬用タイヤへの交換時期を前にリーフレット「依然として後を絶たない!車輪脱落事故 」を発表し、全国のトラック運送事業者やドライバーに向けて注意喚起をおこないました。リーフレットの中では車輪脱落防止のポイントとして「適正なタイヤ交換作業」「タイヤ交換後のトルクレンチによる増し締め」「日常点検、定期点検の実施」の3点が紹介されています。

また、車輪脱落事故の主な原因であるタイヤ交換について、手順とポイントを下表のように紹介しています。また、点検や清掃後に亀裂や損傷などの異常があったパーツは、決してそのまま使い続けることなく交換する必要があります。

手順①
ハブ面
  • 点検:ハブ面の摩耗・損傷をチェックする
  • 清掃:ディスクホイールの取付面、インロー部を清掃する
  • 給脂:インローブに規定のグリスを薄く塗る
手順②
ディスクホイール
  • 点検:ホイールナットの当たり面、溶接部、ホイールボルト穴や飾り穴、ハブの取付面、ディスクホイールの合わせ面、計⑤箇所に亀裂、摩耗、損傷などがないかを確認する
  • 清掃:ホイールナットの当たり面、ハブ取付面のサビやゴミなどを清掃する
手順③
ホイールボルトおよび
ホイールナット
  • 点検:亀裂、損傷、著しいサビの有無を確認。ホイールボルトのネジ部については、つぶれ、やせ、かじりなどの異常の有無もチェックする。ワッシャは正しく確認するかどうかを確認。
  • 清掃:ネジ部分のサビ、ゴミ、泥などを清掃する
  • 給脂:エンジンオイルなどの潤滑油をネジ部分に塗布する。ホイールボルトの当たり面には塗布しないよう注意
手順④
タイヤの取り付け
  • 取り付け:センタリングガイドを活用して取り付けをおこなう。ホイールナットは元々の位置のホイールボルトに取り付ける
  • 仮締め:インパクトレンチは規定トルク以下で仮り締めする。対角線順に2~3回にわけて実施
  • 増し締め:タイヤ交換後、50~100km走行後を目安にトルクレンチで増し締めを行う

大型車の車輪脱落事故は年々増加傾向にあります。また、脱落した車輪が周囲の車両や歩行者にぶつかれば死亡事故につながるおそれもあり、大変危険です。車輪脱落事故の多くは冬用タイヤへの交換後に発生していますが、適切な手順で交換をおこなえば、車輪脱落事故は予防することが可能です。

文/BUY THE WAY lnc.

ドライブワーク通信バックナンバー
  • 能登半島地震の被災地に対する、運送事業者の支援を一部紹介
    2024年1月1日に発生し、240名の命を奪った能登半島地震から1ヶ月が経過しました。被災地では現在でも約1万4000人の方が避難所での生活を余儀なくされています。そんななか、全国のさまざまな企業が、被災地に向けた支援を実施、あるいは今後の支援を表明しています。今回は、運送事業者が行った支援について、ごく一部ではありますが紹介していきます。
  • 佐川急便、再配達の荷物をファミリーマートのロッカーで受け取れるサービスを開始
    2024年1月22日、佐川急便株式会社(以下:佐川急便)は、不在で受け取りができなかった宅配便の荷物を、ファミリーマートの専用ロッカーで受け取れるサービスを開始しました。再配達の削減効果に期待がかかるほか、ユーザー目線では受け取りの選択肢が増えることによる利便性の向上が見込まれます。
  • 消費者庁、EC事業者に対し「送料無料」の表示の見直しを要求
    2023年12月19日、消費者庁 はEC事業者などに対し、「送料無料」表示の自主的な見直しを求める旨を発表しました。この要求の背景にあるのが、背景には、2024年4月以降に起こるとされている「物流の2024年問題」です。
  • 引越事業者優良認定制度(引越安心マーク)とは?概要と取得の手順を紹介
    「消費者に選ばれる引越事業者でありたい」「引越作業の質の高さをアピールしたい」引越事業者のなかには、上記のような悩みをお持ちの引越事業者の方もいるのではないでしょうか。多くの消費者は、できるかぎり信頼のおける引越し業者に依頼したいと考えるものです。そこで効果的なのが、「引越事業者優良認定制度(引越安心マーク)」の取得です。全日本トラック協会(全ト協)による認定制度なので、取得すれば客観的に引越作業の質の高さをアピールすることができます。本記事では、引越安心マークの概要と、取得手順について解説します。取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください 。
  • 事業用自動車総合安全プラン2025」達成に向けた、全日本トラック協会の取組状況が公表
    令和5年11月17日、「事業用自動車総合安全プラン2025」達成に向けた全日本トラック協会の取組状況 が発表されました。本記事では、国土交通省が掲げる「事業用自動車総合安全プラン2025」と、その達成のために全日本トラック協会が定めた「トラック事業における総合安全プラン2025」の概要と現状について、それぞれ解説します。

ドライブワーク通信一覧へ

Copyright (c) Az staff Inc. All Right Reserved.