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ネット通販とトラック運転手の仕事の関係はどう変わる

ネット通販の拡大が止まらない。
「サービスの良さ」「送料無料」をうたい、より早く・安く届けることが常識となっていたネット通販業界だが、一方で慢性的なドライバー不足や、荷量の増加に伴う労働環境の悪化が深刻化している。これを問題視し、最近では改善に向けて各社があの手この手で取り組み始めた。
今後のネット通販業界と、トラックドライバーの仕事の関係がどのようにして変化してゆくのかをまとめた。

Amazonが覇権を握ると、ドライバーはどうなるの?

現在ネット通販業界の覇権を握っているのはAmazon社だ。2016年売上高は1.1兆円を超すなど、他社を大きく引き離している。Amazon社は自社物流に強いこだわりがある。
次々に配送センターを新設し、現在は東京近郊に10箇所の物流拠点を持つ。さらに昨年の「プライムナウ」(専用のアプリを使うと1時間以内に特定の商品が消費者のもとに届くサービス)の開始と共に小規模な物流拠点を設け始めた。
拠点となる物流センターの下に、地域密着型の小さな配送センターを作ることで、輸送会社に頼らず、独自の輸送ルートで消費者のもとに直接商品を届けることで仲介業者のコストを下げることを狙っている。

各巨大通販サイトが自社流通を整備することで、輸送業界はどうなるのか?トラックドライバーの需要は減るのか?これに関しては、Amazonは小規模配送センターとトラックドライバーを直接結びつけることを考えているようだ。

「フリーランス・トラックドライバー」の時代

「Uber」というサービスがある。これは、タクシーを必要とする人がアプリに行き先と人数を入力すると、近くを走る利用可能なタクシーに顧客情報が届き、マッチングされるというサービスだ。日本ではまだあまり利用が進んでいないものの、海外では大人気で、欧米やアジアでは多くの人が利用している。

これと同じことをアマゾンはトラックドライバーと荷主との間でやろうとしている。商品を販売する店舗に配送の必要が出た時、オリジナルアプリを通じてトラックドライバーのスマホにお知らせが届き、空きのあるドライバーが配送を担うというもの。アプリは荷物の量や行き先とともにドライバーに支払われる手数料をリアルタイムで表示され、また、荷積から荷下しの最短ルートも表示される。
店舗は荷物を運んでくれるドライバーを直接見つけられ、ドライバーは仲介者を介さずに仕事を見つけることが可能になる、つまり「Uberの荷物版」だ。これにより、アマゾンは中間業者を「中抜き」して、約15%ともいわれる配送手数料を省くことができる。
これが他の通販サイトでも浸透すれば、トラックドライバーはどこかの運輸会社に所属せず、フリーランスとして活躍することができる時代が来るというわけだ。長時間の労働時間・決まった勤務時間の確保の難しい、子育て中のお母さんや、定年を迎えて引退したドライバーも、隙間時間を見つけて仕事ができるのは嬉しい。

対応に限界、ヤマト「再配達」見直し

ネット通販の増加に伴い問題視されているのがドライバーの業務量の増加だ。一番大きいのが「再配達問題」。一度宅配便を届けて留守だった場合、顧客に無事届くまで、ドライバーは繰り返し何度も顧客の元を訪れなければならない。再配達用紙をドアに挟んでも、連絡してこない顧客も多い。このことが近年、ドライバーたちを悩ませていた。
あまりにも増えすぎた「再配達」を見直すため、ヤマト運輸が、再配達締め切り時刻の変更や配達時間帯指定枠変更など、一部のサービスを縮小することを発表した。これはドライバーの労働環境の改善が必要とする春闘合意を受けてのもの。ドライバーにとっては救いとなる話だ。アマゾンが昨年佐川との契約を打ち切って以降、その貨物の多くをヤマト運輸が担ってきたが、限界が来たということなのだろう。
ヤマト運輸といえば、昨年8月にドライバーへの残業代不払いや、昼食時間も満足に与えなかったなどの問題で横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けた。これを受け、同社では残業代不払いへのさらなる調査を行うほか、宅配時間の「12時から2時」(最も再配達になりやすい時間帯)を廃止し、以前は「午後8時から午後9時」だった宅配時間帯を「午後7時から午後9時」に拡張するなどして、ドライバーの十分な休息・食事時間の確保や、労働環境の改善に乗り出す。春闘ではこれに加えて、退勤から次の勤務までに10時間の間隔を設ける「インターバル制度」の新設のほか、賃金面でも月額6338円の改善を行うことに合意している。

まとめ

ネット通販の荷物の増加によって長時間拘束されるドライバーが増え、それにより離職が増加し、さらなる労働環境の悪化を招く……。ニーズは増えたものの、それがかえって担い手を減らすという大きな矛盾に苦しんでいた運輸業界。
しかし物流システムが物理的な限界を迎え、また過酷な環境に置かれたドライバーたちが声を上げ始めたことで「トラックドライバーこそがこの業界のライフラインである」と多くの人々が気付き始めているのではないか。ヤマト運輸が荷量の制限と労働環境の改善に乗り出したということで、限界が来ていた運輸業界に風穴が開き、これまで無理のあったサービスと物流システムに改善の見通しが立ち始めるかもしれない。

文/BUY THE WAY lnc.

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