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トラック運送業界の過労死等防止計画

厚生労働省が発表した令和2年度「過労死等の労災補償状況」によると、トラックドライバーを含む「道路貨物運送業」は、業種別の脳・心臓疾患による労災補償状況でワースト1でした。これは業種別中分類で公表されるようになった平成12年度から続く12年連続のワースト1となります。

この事態を受け、全日本トラック協会(以下 全ト協)では「過労死等防止計画」を平成30年3月に策定。同計画では令和4年までに、脳・心臓疾患による過労死等の発症を20%削減すること等を目標に掲げています。

長時間労働の削減には事業者だけはなく、荷主等関係各所との連携が必要不可欠であるため、早期の解決が難しい現状もあるのですが、今すぐに取り組むことができる対策もあります。

全ト協では今すぐ取り組める対策を「緊急対策」と題し、取り組み方を示したリーフレット「今すぐ取り組もう!緊急対策 ~トラック運送業界の過労死等防止計画~」を作成。業界をあげて「緊急対策」を実施することで、過労死の根絶を目指します。

緊急対策1:健康管理

緊急対策の1として挙げられているのが、健康管理。健康診断の受診漏れがないように努める他、受診後のフォローアップもぬかりなく行い、ドライバーの健康状態を把握します。

▽健診受診率の遵守(100%を目指す)

健康診断は労働安全衛生法で義務づけられています。
違反した場合は罰則も定められています。

▽健診のフォローアップの仕組みを構築する

健康診断の結果が戻ってきたら、放置せずに結果を確認し、フォローアップするための仕組みを作ります。
「運輸ヘルスケアナビシステム」の活用などが例として挙げられています。

▽健康状態の悪いハイリスクドライバーの発見に努める

健診項目の高血圧、肥満、糖尿、脂質異常のうち、3~4項目が基準値を超える場合や、長時間労働になっているドライバーをピックアップ。「労災二次健康診断」の利用(無料)を促します。

緊急対策2:就労措置と運行管理

緊急対策の2として挙げられているのが、就労措置と運行管理。健康診断の結果と医療上の措置を照らし合わせながら、各ドライバーに必要な措置を講じていきます。健康状態の芳しくないドライバーが運行を継続する際には、重点的に以下のような運行管理を進めます。

▽当面、残業時間の上限を100時間未満とする

過労死等の認定基準とされる月間100時間を超える時間外労働(残業)時間の削減に優先的に取り組みます。

▽改善基準告示を遵守する

乗務日前日の睡眠時間が最低5時間以上となるよう管理。加えて最低でも週2回以上は、睡眠環境が整った場所で6時間以上の夜間睡眠を確保できるよう努めます。

▽日々の勤務ができるだけ規則的になるように配慮する

長距離運行や夜勤運行、不規則な勤務をできるだけ避け、規則的な勤務になるようにします。

点呼を有効利用した健康管理の推進

リーフレット「今すぐ取り組もう!緊急対策 ~トラック運送業界の過労死等防止計画~」の中では、点呼を有効利用した健康管理方法を紹介。具体的な取り組み例として、以下の4項目を挙げています。

  • ・乗務前および乗務後点呼においてドライバーの血圧を測定し、記録する。
  • ・乗務前点呼において、ドライバーから直前の睡眠時間を申告させ、それを記録する。短時間睡眠者には、睡眠の改善を指導する。
  • ・ドライバーにセルフケアチェックノートを提供し、ドライバーは運行前に体調(健康状態)をチェックし、記録する。
  • ・ドライバーの自己申告およびセルフケアチェックノートや血圧などバイタルサインの測定結果を参考に就労の可否を検討する。

文/BUY THE WAY lnc.

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